サンシャワー展:森美術館

森美術館で始まった「サンシャワー:東南アジアの現代美術展 1980年代から現在までを早速初日に鑑賞してきました。この展覧会はASEAN設立50周年記念でASEAN10ヵ国86組のアーティストが参加し、森美術館と国立新美術館2館で同時開催という展覧会です。これはとりまとめるのが大変そうだぁと、下世話なことを考えましたが、やっぱり時間がかかってます。そりゃそうですね。この展覧会の開催までの経緯の記録はこちらのHPで詳しく見ることができます。

まずはASEANって?という基本から。

ASEAN(東南アジア諸国連合)は、1967年の「バンコク宣言」によって設立され、現在はインドネシア、カンボジア、シンガポール、タイ、フィリピン、ブルネイ、ベトナム、マレーシア、ミャンマー、ラオス(50音順)の東南アジア10カ国で構成されています。10年以上にわたり高い経済成長を維持し、2015年に経済共同体となりました。



東南アジアのアーティストと言えば残念ながら2000年に亡くなった日本酒大好きアーチティスト、モンティエン・ブンマー。日本ではファーレ立川に行けばいつでも彼の作品を見ることができます。また、タイ料理を振る舞うなどのパフォーマンスで有名なリクリット・ティラバーニャ。彼の展覧会は2002年に東京オペラシティアートギャラリーで開催されました。同じくタイ出身のアピチャッポン・ウィーラセタクン、2016年末から2017年始にかけて東京都写真美術館で開催された「亡霊たち」は記憶に新しいところです。その他、ナウィン・ラワンチャイクン、ヘリ・ドノ、一昨年森美術館で個展を開催したディン・Q・レなどなどですが。思い浮かんだアーティストはベトナム人のディン・Q・レとインドネシアのヘリ・ドノ以外すべてタイのアーティストでした。その程度の知識で出向いたサンシャワー展(森美術館)のレポートです。

まず美術館へのエレベーターに度肝を抜くインスタレーション。これはアピチャッポン・ウィーラセタクンの映像と照明と象の作品です。とにかく象がでかい。そして宙吊り。これだけで十分インパクトがありますね。

アピチャッポン・ウィーラセタクン
アピチャッポン・ウィーラセタクン

この導入部の作品で展覧会への期待はマックスです。さぁ、どんな作品が待ち受けているのだろうかと前のめり気味に美術館に入ると最初に迎えてくれるのはとてもひそやかで物静かな文字の作品でした。

サンシャワー展

ここからは展示作品の抜粋画像です。当然ながら映像作品、写真作品、音のある作品、参加型の作品など多種多様な表現となっています。森美術館だけでも多数出品されてますのでとても全作品のレポートはできません。

リュウ・クンユウのフォトモンタージュは巨大で大迫力です。マレーシアらしい色使いとマレーシアが日々発展していく過程でスクラップアンドビルドを繰り返していく様を独特の表現で表しています。よーくみると細かい演出もされているので目を凝らしてみてください。

リュウ・クンユウ
リュウ・クンユウ
リュウ・クンユウ

陶の作品アルベルト・ヨナタン。繊細で美しい。

アルベルト・ヨナタン
アルベルト・ヨナタン

そして、やっぱりありました。モンティエン・ブンマーの作品です。出品作品は全部で4点。ブンマーらしい薬草の香りのする作品「香の絵画」、蜜蝋の作品、そして仏像の型の作品「溶ける虚空/心の型」です。

この仏像の型の作品は下から覗き込むことができますので、外から眺めるだけでなく体験するのを忘れないでください。その際は作品に触れないように細心の注意が必要です。

モンティエン・ブンマーはフランス・イタリアでコンセプチュアルアートを勉強しました。タイへ戻ってからはタイの現代美術を牽引するアーティストとして精力的に活動し、また後進の指導にも力を入れていました。また、アートを学んだ西洋と自国東洋との間で格闘しつつ、タイの伝統的な材料や宗教的背景を作品に取り入れています。当時タイではモンティエン・ブンマーの作品は非常に革新的で斬新なものでした。タイだけでなく東南アジアの現代美術へ多大な影響を与え、その系譜を語る上では欠かせない存在であることは間違いありません。そんな今は亡きモンティエン・ブンマーの思いはタイの若手アーティストに引き継がれ脈々と続いています。モンティエン・ブンマーの作品に久しぶりに再会できただけでもこの展覧会へ足を運んだかいがありました。

モンティエン・ブンマー
モンティエン・ブンマー作品を覗く
中に見えるのは優しい表情の仏像の顔
モンティエン・ブンマー 香の絵画
モンティエン・ブンマー 蜜蝋の作品

アディティア・ノヴァリのインスタレーション作品は、インドネシア語で間違いや滑稽さを意味する「NGSCO」という架空のメーカーの製品群です。製品の一つメジャーのメモリはめちゃくちゃですし、その他どの製品もその用途を満たしていません。アディティア・ノヴァリは自国インドネシアの既存の価値感を独自の視点で茶化しつつも、強さや順応性の高さなどを賞賛しているように見える作品です。

アディティア・ノヴァリ
アディティア・ノヴァリ
アディティア・ノヴァリ

サンシャワー展森美術館で一番SNS映え!?するのはフィリピンのフェリクス・バコロールの風鈴の作品ではないでしょうか。四方からの扇風機から送り込まれる風で風鈴の音が会場中に鳴り響き、カラフルな風鈴が揺れる作品はそれだけで魅力的です。

フェリクス・バコロール
フェリクス・バコロール
フェリクス・バコロール

他にも師であるモンティエン・ブンマーへのオマージュ作品を出品しているナウィン・ラワンチャイクンやコラクリット・アルナーノンチャイの映像作品(約24分)などなど盛りだくさんの内容です。

ナウィン・ラワンチャイクン
コラクリット・アルナーノンチャイ

まだまだ政情、経済ともに不安定な東南アジアで現代美術を生業とすることは、日本でのそれに比べて非常に困難であることは想像に難くありません。日本だってまだまだ現代美術だけで生活できている人はほんの一握りです。それでも東南アジアのアーティスト達が美術で生きようとするのは、表現したいこと、伝えたいこと、発信したいこと、そういった内なる強いメッセージを持っているからでしょう。

だからこそ東南アジアの現代美術はパワフルであり、爆発的であり、時にキッチュで、時にユーモアに富み、時に物哀しいのです。しかし表現方法は様々ですが、私が感じる彼、彼女らの作品の根底に流れているのは、自国や民族に対する絶対的な誇りであり、世界へのメッセージであり、美術で何かを変えられるという強い信念です。

今回のサンシャワー展はそんな東南アジアの現代美術を余すところなく見聞することができる素晴らしい機会です。是非、足を運んでみてください。1回では見きれないので、私も再訪する予定です。というか、実はパワフルな作品が多いので集中力が続かないのです。心地よい疲労感と満足感、そして圧倒的なパワーをもらって帰路につきました。

サンシャワー展
サンシャワー展

サンシャワー展(国立新美術館編)へ続く。

美術館内は撮影可

サンシャワー展 森美術館情報

会期:2017年7月5日(水)~ 2017年10月23日(月) ※会期中無休
開館時間:10:00~22:00(最終入館 21:30)

 ※火曜日のみ、17:00まで(最終入館 16:30)

入場料:2館共通(国立新美術館&森美術館の両方)一般1800円 大学生800円

短館(どちらか1館)一般1000円 大学生500円

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