白井晟一:松濤美術館

白井晟一の建築で都内で気軽に見られる建物は松濤美術館です。1981年に開館した美術館は現在では松濤の顔としてすっかり有名になりました。というかこの美術館くらいしか高級住宅街である松濤を庶民が訪れることはないですから、重要なこの地域の文化発信基地です。

外壁は、韓国の少しピンクがかった花崗岩で、当時の日本では誰も知らない種類だったので白井自らこの石をその色味から「紅雲石」と名付けたそうです。ファサードの佇まいは左右対称で窓などの開口がなく、中央の細長いアーチ状の入口が飯倉のNOAビルを想起させます。

松濤美術館
松濤美術館
松濤美術館

エントランスはオニキスの光天井が印象的です。自然石の文様は本当にきれいだなぁと見入ってしまいます。

松濤美術館

館内に入ると中央が楕円形に吹き抜けになっていて、下は水盤に噴水という演出です。見上げると空、見下ろすと水という屋外空間が美術館の中央に存在します。その楕円形の吹き抜け空間をぐるりと囲んだ回廊は、天井までのはめ殺しの窓で構成された開放的で明るい空間で、この建築の見せ場ではないでしょうか。

松濤美術館
松濤美術館
松濤美術館
松濤美術館

エレベーターでの移動も勿論可能ですが、螺旋状の階段空間も見逃せません。

私は訪れる度にここの写真を撮ってしまいます。螺旋階段の美しいカーブ、レトロな照明、アールが効いたニッチとそこに展示された彫刻が織りなす空間の雰囲気がとても好きです。

松濤美術館
松濤美術館

この白井建築、2013年に半年かけて改修工事を行いました。なるべく当時の建築を変えないように建材に工夫をし、調度品もそのまま引き継ぎ、設備や照明の全LED化などを行なったそうです。そのかいあってよく来館者から「改修工事をしたのに何も変わってないじゃないか」とご指摘を受けるということです。私は何度も通っていますので改修工事後に顕著に変わったなぁと思ったのはトイレです。トイレは内装も設備もすべて新しく生まれ変わりました。機能優先の場所は非常に機能的に、意匠的な部分はなるべく竣工当時のままという徹底した努力がよくわかります。

松濤美術館内の改修前からある革張りのソファにゆったり座って白井建築を堪能してみてください。

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