アール・デコ満載 アンリ・ラパン デザイン旧朝香宮邸 東京都庭園美術館

目黒駅と白金台駅の間にある東京都庭園美術館の建物は、アンリ・ラパンや宮内省内匠寮らが総力を挙げてつくりあげたアール・デコ様式をふんだんに取り入れた旧朝香宮邸です。

春の旧朝香宮邸玄関からの様子▼

東京都庭園美術館

 

朝香宮の広尾の実家

まず、朝香宮というのは久邇宮朝彦親王の第8王子鳩彦王が1906年(明治39)に創立した宮家です。朝香宮の実家である久邇宮邸は、現在広尾の聖心女子大学の敷地になっており、現在も朝香宮の実家である久邇宮邸と当時の門が、重要文化財として保存されています。

聖心女子大学正門(旧久邇宮邸門)は、1924年久邇宮家の長女良子女王(後の香淳皇后)が皇太子殿下(後の昭和天皇)との御成婚の際に宮中へ出発された表玄関車寄です。▼

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学内にある久邇宮邸は期間限定で一般公開していましたが、コロナ禍の昨年と今年は中止になっています。再開の折には是非見学してみたいと思います。

夏の旧朝香宮邸玄関からの様子▼

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朝香宮邸

広尾の旧久邇宮邸は、近代皇室建築として現存する建物が洋館が多い中、宮家本邸唯一の和館の現存例です。

そんな和館で育ったから故なのかどうかは知る由もありませんが朝香宮鳩彦王はアール・デコ満載の洋館を建てるのです。

陸軍大学校勤務中の1922年(大正11)フランスに留学中に交通事故に遭い、看病のため渡欧した允子内親王とともに、1925年(大正14)まで長期滞在しました。

当時アール・デコ全盛期のパリ万博でその様式美に魅せられた朝香宮ご夫妻は、自邸の建設にあたり、フランス人芸術家アンリ・ラパンに主要な部屋の設計を依頼して完成したのが、現在の東京都庭園美術館です。

冬の旧朝香宮邸玄関からの様子▼

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建築を担当した宮内省内匠寮の技師、権藤要吉も西洋の近代建築を熱心に研究し、朝香宮邸の設計に取り組みました。

邸宅内部の改造はほとんどされておらず、今でも当時のアール・デコ様式がそのまま残る貴重な歴史的建造物として、国の重要文化財に指定されています。

東京都庭園美術館へ

1933年に竣工した朝香宮邸は、1947年GHQの命令で皇室離脱した一家が退去後、政府が借り受け、1954年まで吉田茂外相・首相公邸として使用されました。

1950年に西武鉄道に売却され、1955年から国賓、公賓の迎賓館「白金迎賓館」として、赤坂迎賓館開設の1974年まで使用されました。その後「白金プリンス迎賓館」として催事や結婚式、宴会、会議などで使用されました。

旧朝香宮鳩彦王の意向で設置された狛犬を邸内から見る▼

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中庭にある大理石のプールは1964年に西武グループよって建設されたもので、朝香宮邸時代のものではありません。このプールは当時、一般開放もされたそうですが、入場料は平日1000円、土日祝は1500円だったそうで、現在の物価に換算すると10,000円と15,000円という超高額だったそうです。▼

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西武グループはその後客室を建設してホテルにする計画を立てますが、近隣住民の反対にあい、1981年東京都に売却。その後1983年に美術館として生まれ変わったのが現在の庭園美術館です。

西武グループのプリンスホテルの名前は、GHQの命令により皇籍離脱後、生活に困窮した旧宮家の土地を次々購入し、ホテルを開業した事に由来しているのはご存知の通りです。

もしかしたら、東京都庭園美術館も白金プリンスホテルになっていたかもしれないと思うと、近隣住民の方々の反対運動があって良かったーとつくづく思います。

外観

宮家の邸宅ですから、門からの道のりも普通ではありません。正門脇で入場チケットを購入してから、美術館へ向かうこの道のりが、実は一番高揚する時間かもしれません。毎年毎年数回訪問しているのでこちらの写真は桜の咲く春先のものです。▼

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ようやく姿を現した旧朝香宮邸の外観です。▼

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庭側から見た旧朝香宮邸、左隣は2014年にオープンした新館です。▼

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内観

庭園美術館、すなわち旧朝香宮邸をじっくり観るには、通常の展覧会が開催している時よりも、年に1回開催する建物公開展の時に訪問するのがおすすめです。

ちなみに2021年は4月から6月まで(コロナによる臨時休館期間を含めて)開催していました。次回の建物公開展は2022年の4月以降となります。

それでは、内部の部屋を見てみましょう。

アンリラパン

フランス、パリ生まれの画家でありデザイナーです。朝香宮邸では、大広間、大客室、小客室、次室、大食堂、殿下書斎および居間の全7室の内装デザインを手がけています。

香水塔

次の間にある旧朝香宮邸のアイコン的な存在の「香水塔」もアンリ・ラパンのデザインです。▼

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大広間

格子の中に整然と並んだ40個の照明が印象的な大広間は、装飾を抑え、壁面がウォールナットの落ち着いた空間です。▼

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大客室

この邸宅で最もアール・デコ満載な大客室の壁面上部はアンリ・ラパンによる壁画、シャンデリアはルネ・ラリックによるもの。

ちょっと写真では見えづらいですが、扉上部はレイモン・シュブのタンパン装飾、扉はマックス・アングランのフロスト仕上げのエッチングガラスです。この部屋は美術作品が展示されていなくても見どころだらけで、部屋そのものがアンリ・ラパンによる作品と言えるででしょう。▼

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大食堂

大客室の隣の大食堂もまた、この邸宅の中でアール・デコ様式が凝縮されている部屋です。この窓の対面にはアンリ・ラパンによる壁画が施されています。▼

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植物の紋様が描かれた壁のレリーフは、レオン・ブランショのデザインでコンクリート製のものがフランスから送られてきましたが、輸送中にヒビが入ったため、日本で型をとり石膏で再製作しました。扉は大客室同様マックス・アングランのフロスト仕上げのエッチングガラスです。▼

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殿下居間

2階殿下居間もアンリ・ラパンによるデザインです。統一されたデザインの壁紙とカーテンは現存するものに倣って2014年に再製作されたものです。▼

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ルネ・ラリック

アール・ヌーボー、とアール・デコの両時代に渡るデザイナーでありガラス工芸家です。東京都庭園美術館でも度々展覧会が開催されていますが、特にガラス作品は現在でも人気が高い作家です。

朝香宮邸の玄関にあるルネ・ラリックの有名すぎるガラスレリーフの翼を広げる女性像は型押しガラス製法でできています。一点ものであることと、その大きさが、ルネラリック作品としてもとても貴重なものです。

正面玄関

床のモザイクはルネ・ラリックデザインではないようですが、モザイクとガラスの美しいアール・デコなエントランスになっています。▼

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大客室

大客室のルネ・ラリックによるシャンデリア「ブカレスト」▼

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大食堂

大食堂のシャンデリア「パイナップルとザクロ」。折り上げ天井におさまるフルーツのレリーフが美しいです。▼

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過去のルネ・ラリック展

この美術館はルネ・ラリック作品を観るにはこれ以上ない空間です。「ルネ・ラリック リミックス ー 時代のインスピレーションをもとめて」についてはこちらを▼

「ルネ・ラリック リミックス ー 時代のインスピレーションをもとめて」東京都庭園美術館

ウィンターガーデン

温室として最上階に設えられたウインターガーデンは、花台、蛇口、排水溝などが設けられています。目地なしで施行された市松模様の壁は大理石、床は人造大理石です。椅子は1932年に朝香宮殿下が自身で購入したマルセルブロイヤーです。この部屋は公開日が限定されていて通常は見学できません。おそらく来年の建物公開展の会期中に限定公開されると思います。▼

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ベランダ

ウィンターガーデンは限られた日しか見学できませんが、こちらのベランダはたいてい公開されています。現在開催中のキューガーデン「英国王室が愛した花々」展でも普通に立ち入りできるようになっています。このベランダからは庭がよく見えてきもちいいです。▼

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照明

どこもかしこも見どころだらけなのですがちょっとだけ照明について。ルネ・ラリックのシャンデリアも素晴らしいのですが、その他各部屋の照明も工夫が凝らされていて、それをみて回るだけでも楽しめます。

階段の手すりのデザインと統一されたアール・デコの特徴的な花模様のパターンの照明塔▼

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階段と統一されたデザインです。▼

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妃殿下の居間の照明は5つのボールがぶどうのように寄り集まった個性的なデザインで目を引きます。また、展覧会によってカーテンが閉じられていて見られないこともありますが、半円形のベランダのタイルは明治から昭和初期に美術タイルとして名を馳せた泰山タイルが使われています。▼

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私が気になる照明の一つに姫宮居間のこの照明、どうしてもバトミントンのシャトルに見えてしまうのですが、とっても可愛いのです。天井の模様も姫宮らしく花をモチーフにした装飾が可憐です。▼

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新館

2011年より改修工事のため長期休館をしてリニューアルオープンと同時に開館した新館の設計監修は杉本博司、設計を久米設計が担当しています。▼

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新館には2つの展示室とミュージアムショップ、そしてミュージアムカフェTEIENがあります。▼

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日差しが入り込んでなんとも美しい光景です。光が綺麗な美術館は印象に残りますね。▼

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ミュージアムカフェ

カップアンドソーサーもアール・デコ模様のミュージアムカフェTEIEN。テラス席は人気なので待ち時間があることも。▼

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ミュージアムカフェTEIENについて詳細はこちらを参照ください。▼

東京のミュージアムカフェ特集 その1(目黒・恵比寿・六本木)

 

ハートの影

本館と新館をつなぐ廊下にある水玉模様の美しいガラスは、杉本建築でお馴染みの西麻布にある三保谷硝子が施行した特殊な硝子です。

陽が差し込むと床にハート型の影が落ちてとっても綺麗です。杉本博司さんも想定外のこのハートに感激したとかしなかったとか。。。よく晴れた午前中が狙い目です。▼

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茶室

庭には武者小路千家の茶人中川砂村が設計し、大阪の数寄屋大工棟梁平田雅哉が施行して1936年(昭和11年)に上棟した茶室「光華」があります。この茶室も本館などと同様国の重要文化財に指定されています。通常は立礼席までしか入れませんが、限定公開の日は広間に(座敷)に入ることができます。▼

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限定公開の時には作品展示も同時に行われることがあります。2021年夏の限定公開ではガラス作家青木美歌の作品が展示公開されました。▼

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茶室の前は日本庭園です。池には鯉が泳ぎ、秋には紅葉が美しい庭園です。▼

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庭園

美術館には入館せずに庭園のみの利用も可能です。(要入場料)広々とした庭園でゆっくりするのもいいですね。週末ともなると多くの家族連れで賑わっています。現在はコロナ禍のため飲食は原則禁止です。▼

東京都庭園美術館

 

庭園美術館には3つの庭園があります。入り口近くの西洋庭園、茶室「光華」周りの日本庭園、そして美術館前の芝庭です。芝庭には安田侃作品もあります。▼

東京都庭園美術館

西洋庭園は正門すぐ横です。正門の横には唯一入場料不要で利用可能なレストランデュパルクがあります。▼

 

 

美術館としてだけでなく、アール・デコ建築として、広々とした庭園として、テラス席がきもちいいカフェとして、などなど楽しみ方がたくさんある東京都庭園美術館。時間や季節が変わるごとに表情も変わります。一日いても飽きることはありません。

展覧会によっては予約制なので確認してから出かけましょう。

現在開催中の展覧会

キューガーデン 英国王室が愛した花々 シャーロット王妃とボタニカルアート展

2021.9.18-11.28    事前予約推奨  写真撮影は一部エリアのみ可能

東京都庭園美術館

基本情報

東京都庭園美術館

10:00-18:00   月休 庭園のみの利用も要入場料

港区白金台5丁目21−9 MAP

最寄駅:JR目黒駅徒歩6分、東京メトロ白金台駅徒歩7分

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