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芦ノ湖畔に佇む自然と調和したホテル 村野藤吾設計 ザ・プリンス箱根芦ノ湖


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前々から泊まってみたいと思っていた箱根にある村野藤吾設計のホテル、ザ・プリンス箱根芦ノ湖に宿泊してきました。

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村野藤吾とプリンスホテル

ザ・プリンス箱根芦ノ湖(竣工時は箱根プリンスホテル)の竣工は1978年。村野藤吾が87歳で竣工した物件です。その後、村野藤吾は「1982年竣工/グランドプリンスホテル新高輪(竣工時は新高輪プリンスホテル)」、基本設計を終えて逝去した「1986年竣工/グランドプリンスホテル京都(竣工時は京都宝ヶ池プリンスホテル)」など全部で3つのプリンスホテルを手がけています。

村野藤吾設計 ザ・プリンス箱根芦ノ湖

3つのプリンスホテルはどれも曲線を多用しており、美しい装飾がふんだんに施されています。当時の建築では敬遠されていた造形美を追求した村野藤吾の傑作の一つがザ・プリンス箱根芦ノ湖です。また、ホテルという非日常の空間に、村野藤吾が演出した高揚感は、今もなお当時のまま輝き続けています。

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エントランスからロビーへ

ホテルを訪れると、まず深く低い軒のエントランスに出迎えられます。そこにきらびやかな装飾は一切なく、むしろ地味な印象を受けます。あまりにも地味なので到着した直後はちょっと拍子抜けしてしまいました。

村野藤吾設計 ザ・プリンス箱根芦ノ湖

このホテルは、大きく3つの建物で構成されています。まず、エントランスとラウンジ、またバーをもつ玄関としての建物、さらに芦ノ湖畔を望む中庭にある円形の2つの客室棟です。そして、そのあいだをつなぐのがロビー空間です。

圧巻のロビー空間

エントランスから客室へ向かうには、ロビーを通ります。このロビー空間で、最初にエントランスで感じた非常に地味な印象は完全に覆ります。

ザ・プリンス箱根芦ノ湖

 

緩やかに曲面を描いて上に巻き上がる木の天井は、周囲の重厚な柱との対比で、まるで天蓋のように全く重さを感じさせません。むしろ八ヶ岳美術館の天井のドレープのような華やかさや軽やかさを感じるくらいです。

スワンチェア

ロビー空間にもかかわらず、ソファやテーブルは中央の道を譲り、柱と柱の間におさめられて、その存在感を極力抑えているかのような場所に配置されています。

村野藤吾設計 ザ・プリンス箱根芦ノ湖

しかし、実はこの椅子も村野藤吾のデザインです。この椅子の特徴は座面が320mmと極端に低く、それでいて背もたれは普通の椅子と同様の400㎜の高さがあることです。ここまで座面を低くデザインしたのには理由があって、この椅子に座ると座面が低いので、よりロビー空間を広く感じる効果を狙っているのです。この椅子はスワンチェアとして現在でもIDEEなどで一般販売しています。

ロビーから客室棟に向かう階段も、普通なら昇り階段がありそうですが、ここはロビーの大空間で高揚した気持ちを少し落ち着かせるかのように、階段を降りて客室へ向かいます。

村野藤吾設計 ザ・プリンス箱根芦ノ湖

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客室棟

2つの客室棟は各々3フロアで合計96室(現在は91室、別館が43室)です。客室の他にレストランや会議室などがありますが、まわりの木々に埋もれてしまうくらいの高さです。

ロビーを抜けて、客室棟に入ると中庭に突き当たります。竣工当時から植えられている竹が、客室棟の建物を抜き去る勢いで伸びていて自ずと視線は上の方に向かいます。これも計算ですね。

バルコニー越しの景色

客室について部屋の扉を開けると、入り口周りに集められた浴室とクロゼットなどの機能的なスペースに一旦視界をさえぎられます。

更に奥へ入ると、真正面に現れるのは、バルコニー越しに広がる芦ノ湖とその先の山並みです。入り口で一度視線を遮られた分、バルコニー越しに見える景色の広がりへの感動が倍増します。

エントランスからロビーまでの空間の演出と同様な空間の使い方が客室にも踏襲されています。

村野藤吾設計 ザ・プリンス箱根芦ノ湖

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曲線美

細かいところを言い出すとキリがないのですが、客室だとバルコニーに村野藤吾らしい曲線がたくさんありました。

村野藤吾設計 ザ・プリンス箱根芦ノ湖

この雨樋のデザインは、長野の小山敬三美術館でも見かけました。村野藤吾のこのような有機的なデザインは粘土を使って検討したものです。▼

村野藤吾設計 ザ・プリンス箱根芦ノ湖

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箱根 なだ万雅殿

2つの客室棟にはそれぞれレストランがあります。一つは日本料理の箱根 なだ万雅殿、もう一つはメインダイニングルーム ル・トリアノンです。

今回の宿泊で芦ノ湖畔を眺めながら食事がいただける箱根 なだ万雅殿で朝食を取りました。なだ万もトリアノンも2フロア分の十分すぎる天井高を持つとても贅沢なスペースです。

天井の高さもさることながら、壁と天井のデザインなど至るところにオリジナリティあふれるデザインが施されています。▼

村野藤吾設計 ザ・プリンス箱根芦ノ湖

階段

このホテルにはたくさんの村野藤吾らしさがあるのですが、美しい階段もまたその一つです。2つの螺旋階段は特にその姿が美しく、意味もなく上り下りしてしまいました。

美しい階段を含むザ・プリンス箱根芦ノ湖の空間について是非動画を参照してみてください。▼

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今も残る村野建築

遠目で見ると客室棟も森の一部ように自然に溶け込んでいます。それはきっと建物が有機的な曲線で構成されていることに起因していると思います。また、丁寧で行き届いた保存管理によって、この建物はゆっくりと時間をかけて森になじんでいったのではないでしょうか。

村野藤吾は、大規模な商業施設や公共施設、小規模な個人住宅や茶室に至るまで、非常に幅広い建築を残しています。そして今回宿泊したザ・プリンス箱根芦ノ湖のように、竣工時の姿をきちんと残し、現在も大切に使われているものも多い建築家でもあります。

謙虚な姿勢

それはきっと村野藤吾の建築家としての姿勢が、共感を生むものだったからなのではないでしょうか。村野藤吾は晩年まで、建築家は徹底して謙虚でなくてはならないという考えを持っていました。それは、建築家個人の功績ではなく、現代建築は社会のものなのだ、という認識です。

建築は社会のもの

『新建築』1980年1月号で村野藤吾はこう述べています。建築は”村野藤吾の作品”ではなく、”村野の関係した作品”であって、社会のものなのだ。だから社会の人に建築を大事にしなさい、愛しなさい、傷つけてはいけない、ということが言える。それは村野を生かすためじゃない。建築自身を生かすためのものです」

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ザ・プリンス箱根芦ノ湖は、村野藤吾の晩年の傑作の一つです。村野藤吾らしさ満載のバルコニーからは、芦ノ湖や富士山を眺めることができて、とてもいい時間を過ごすことができました。季節を変えて再訪したいホテルです。

宿泊情報

村野藤吾設計のザ・プリンス箱根芦ノ湖。宿泊はこちらから予約をどうぞ。

基本情報

ザ・プリンス箱根芦ノ湖

神奈川県足柄下郡箱根町元箱根144 MAP

目黒区庁舎▼

紀尾井町の3つの村野建築▼

赤坂迎賓館▼

 

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