「建築家坂倉準三と高島屋の戦後復興」展を日本橋高島屋史料館TOKYOにて

日本橋高島屋本館4階にある高島屋史料館TOKYOにて「建築家坂倉準三と高島屋の戦後復興」展を鑑賞してきました。コンパクトなスペースながら、とっても内容の濃い展覧会でした。


坂倉準三

岐阜県生まれの坂倉準三は、東京帝国大学文学部美術史学科(現東京大学)卒業後に、建築家を志して渡仏します。パリの土木学校で学んだ後に1931年から1939年まで、近代建築の巨匠ル・コルビュジエ事務所で修業していたことは有名ですね。コルビジェ事務所を坂倉準三に紹介したのは、前川國男と言われています。

坂倉の建築家としてのデビュー作は、1937年のパリ万国博覧会日本館です。パリのトロカデロの傾斜地に建てられていたこの建物は、世界の名だたる建築家たちのパヴィリオンと肩を並べ、博覧会建築部門でグランプリを獲得しました。坂倉にとっても初の設計で初の快挙でしたが、日本人の建築家が国際的な舞台で認められた初めての仕事でもあったのです。

坂倉準三と高島屋

このパリ万博の仕事を通じて高島屋と出会い、関係を深めていったということですから、高島屋と坂倉準三は戦前から交流があったわけです。

建築家坂倉準三と高島屋の戦後復興を日本橋高島屋史料館TOKYOにて


高島屋和歌山支店

坂倉準三と言えば、2020年に重要文化財に指定された神奈川県立近代美術館(現鶴岡文華ミュージアム)や、日仏学院(現アンスティチュ・フランセ東京)、国際文化会館など、坂倉が手掛けた建築が貴重な文化的建築的価値あるものとして大事に保存管理されているものも少なくありません。

建築家坂倉準三と高島屋の戦後復興を日本橋高島屋史料館TOKYOにて

また、坂倉準三で百貨店関係と言えば東急会館や小田急百貨店を想起する人は多いはずです。

しかし、今回この展覧会に足を運んで初めてその存在を知ったのが1948年竣工の高島屋和歌山支店です。展覧会を鑑賞してこの和歌山支店に端を発して、のちの坂倉準三の大規模な公共空間の仕事へ繋がっていくという流れを知ることができました。

たった4年幻の百貨店

高島屋和歌山支店は、1948年(昭和23)9月に開店し、1952年(昭和27)年8月に閉店してしまいました。わずか4年間という短命な百貨店だったのです。そして、残念ながら建物も現存していません。

69年前に閉店してしまった地方の百貨店です。今となっては、この百貨店に実際に足を運び買い物をしたという人もほとんどいないでしょう。今回はそんなまるで幻のような坂倉準三戦後2番目の建物の紹介から展覧会が始まります。

模型で見る和歌山支店

この展覧会会場内で唯一写真撮影可能だったのが高島屋和歌山支店の1/100模型だったので、模型の4面全ての写真を掲載します。

規模は建坪が196坪の木造2階建で百貨店としては小規模な建物です。外壁は白色モルタル、屋根は波型スレート葺きです。▼

建築家坂倉準三と高島屋の戦後復興を日本橋高島屋史料館TOKYOにて

店内は吹抜けで全フロアが一体空間になっています。角地に建っており、こちらは通り側のエントランスです。▼

建築家坂倉準三と高島屋の戦後復興を日本橋高島屋史料館TOKYOにて

通り側は2階層、バックヤードのある背面は3階層の構成。各階をつなぐのはスロープです。

こちらはバックヤードのある背面▼

建築家坂倉準三と高島屋の戦後復興を日本橋高島屋史料館TOKYOにて

通り側と背面で階層が違うのとスロープで繋がっているのがわかります▼

建築家坂倉準三と高島屋の戦後復興を日本橋高島屋史料館TOKYOにて

中央のスロープでスキップフロアになった各階を繋ぐ内部空間は ル・コルビュジェのサヴォア邸を想起させます。また、坂倉準三デビュー作のパリ万博日本館に通じる要素も多分にみてとれる建物です。

会場内では、高島屋和歌山支店をCGで再現した映像を鑑賞することができます。模型と当時の貴重な記録写真と再現CG映像で、この百貨店がどんな建築だったのかを紐解くことができました。これは本当に貴重な展示でした。


高島屋大阪難波新館

高島屋和歌山支店の後に坂倉準三が高島屋と手掛けたのは、1950年の「高島屋大阪難波新館改増築(ニューブロードフロア)」です。商業施設と交通空間の複合建築で戦災を受けた南海難波駅高架下の大食堂跡(地下部分)を、高島屋の売り場へと大改築するという複雑な計画でした。

この大きな仕事が後々の坂倉準三の代表作ともなる誰もが知る1954年の東急会館や1966年の新宿西口広場・地下駐車場へと繋がっていくのです。


凝縮された濃い展覧会

高島屋史料館TOKYOは行かれたことのある人ならおわかりの通り、決して広いスペースではありません。しかし、いつもスペースのコンパクトさとは反比例した非常に内容の濃い展覧会を開催しています。

今回の展覧会は、高島屋という百貨店を切り口に戦後間もない頃の坂倉準三の仕事の流れを模型や写真などを交えて的確に研究解説してくれます。

例えば、幻の百貨店高島屋和歌山支店の模型やCGだけでなく、高島屋大阪難波新館の当時の記録写真によるスライド上映や当時の関係者のインタビュー映像など全て鑑賞しようと思うととても1時間では足りません。

非常に専門性が高い内容ですがわかりやすく、その掘り下げ方や視点は、他に類をみないもので、とても楽しめました。まるで書籍を読むような展覧会で、鑑賞する展覧会というよりは、読書に近い感覚でした。大学の講義のような感じかも。

こんなに濃い内容で勉強になる展覧会が入場無料ですから、是非とも時間に余裕を持って出かけることをお勧めします。

展覧会のフライヤーの裏面です。▼

建築家坂倉準三と高島屋の戦後復興を日本橋高島屋史料館TOKYOにて

日本橋高島屋の営業日とは別の史料館独自の休館日があるので要注意です。月火や年末年始は高島屋が営業していても休館しています。


基本情報

建築家・坂倉準三と高島屋の戦後復興 ー「輝く都市」をめざしてー

2021年9月15日(水) -2022年2月13日() 11:00~19:00 月火休館(12/27-2022.1/4休)入場無料

高島屋史料館TOKYO 4階展示室

東京都中央区日本橋2-4-1

坂倉準三が手掛けた日仏学院(現アンスティチュ・フランセ東京)はこちらを参照ください。▼

名建築で昼食を アンスティチュ・フランセ東京

関連記事

コメントを残す