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椅子や螺旋階段など見どころ満載!前川國男設計 レンガのような打ち込みタイルの建築 上野 東京都美術館


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モダニズム建築の巨匠前川國男の上野の建築東京文化会館に続いて第二弾は、東京都美術館です。

前川國男は日本人で初めてル・コルビジェに師事した建築家であり、自身が主催する前川國男建築設計事務所出身者にはあの丹下健三がいます。

これらのことからもわかるように前川國男は、戦前・戦後を通じて日本近代建築の歴史に大きな足跡を残した偉大な建築家なのです。

上野には、駅前に前川國男の60年代の打放しコンクリートの建築を代表する東京文化会館と共に、上野恩賜公園の中に今回取り上げる東京都美術館があります。

前川國男設計 東京都立美術館

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東京都美術館

東京都美術館は1975年に竣工しました。駅前にある東京文化会館を手掛けてから14年後、前川國男70歳の時の建築です。

敷地面積約 12,000 ㎡、 地下 3 階地上 2 階、2010 年改修工事に着工、2年の休館を経て2012 年リニューアル・オープンしました。

前川國男が手がける現在の都美館の前に建っていた東京府美術館は、建築家岡田信一郎による四方の入り口に列柱を配したヨーロッパ古典主義建築で、とても威厳のある建物でした。

しかし、前川國男は美術館をひとつの都市空間として捉えており、 人々がそこでが出会い、自由に行き来する広場(中庭)こそ都市の中心であるべきだと考えたのです。

東京都美術館 前川國男

前川カラーが映える!公募展棟

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エントランス

東京都美術館、通称都美館には大きく3つの機能があります。

1常設・企画展の開催、2公募展の開催、3教育普及など文化活動

これら全ての機能を満たした上で、中庭を設けるために都美館は建物の約 60%が地下に埋めこまれています。

前川國男設計 東京都立美術館

はつりコンクリートの連続アーチが人々を迎えいれる

また、 上野公園と調和するように高さを低く抑えてあるのも特徴です。

エントランスホールを含むメインフロアは地下1階に設定されているので、訪問者は、機能ごとに分割された公募展示棟、企画展示棟、文化活動棟が周囲をぐるりと取り囲む地下1階の広場へ誘導されるようになっています。

前川國男設計 東京都立美術館

中央棟から公募展棟を見る。訪問者は階段とエスカレーターで地下へ

都美館は、同じ形の建物を通路でつないだり、ずらしたりして、 建物に動きや変化を取り入れています。 ▲

公募展示室は同じ形の建物が4棟 少しずつずれて建っています。

前川國男設計 東京都立美術館

公募展示室の壁面の前川カラーが引き立つ夜景

都美館の本当の美しさは夜かもしれません。▲

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打ち込みタイルの建築

前川國男は、主に50年代後半から60年代にかけて東京文化会館や京都のロームシアター、前川國男建築がたくさんある青森県弘前市の弘前市民会館など、多くの打放しコンクリート建築を手掛けました。

しかし、60年代後半から70年代になると打ち込みタイルの建築を手がけるようになります。

東京都美術館もその例に漏れず前川國男が開発したまるで煉瓦のような打ち込みタイルの建築です。

前川國男設計 東京都立美術館

煉瓦と見紛うタイルにはよく見ると穴が開いている

まるでレンガのようなこのタイルの特徴は、炻器質で釉薬のかかっていない焼き物です。

また、分厚く、 目地部分まで一体になった複雑な形をしていることです。

さらに、よく見ると前川國男独自の打ち込みタイル工法の際に釘を打った穴があるのも特徴です。

タイルの中心に大きい穴が、目地のように見える溝には小さな穴が開いています。

訪れた際はこの穴も見てみましょう。

前川カラー

東京文化会館がそうであったように都美館も前川カラーと言われるカラフルな色彩がポイントになっています。

前川國男設計 東京都立美術館

陽が落ちて内部の照明が点灯すると壁の色がより際立つ

4つの建物がずれたようにくっついている展示棟の休憩スペースには、赤、緑、黄色、青塗り分けられ、そこに壁面同様にカラフルな椅子が設置されています。

この椅子のデザインも前川國男によるものです。

前川國男設計 東京都立美術館

椅子の制作は天童木工。▲

前川國男設計 東京都立美術館

赤い壁の休憩スペース▲対面の企画展示棟にも同じ椅子が並んでいるのが見えます。

前川國男設計 東京都立美術館

青の壁の休憩スペース。▲椅子の座面は竣工当時の色見本を元に2012年のリニューアルの際に張り替えられました。

螺旋階段

館内にあるおにぎり型(おむすび型)の螺旋階段も見所の一つです。

前川國男設計 東京都立美術館

螺旋階段を下から見上げたところです。▲

前川國男設計 東京都立美術館

螺旋階段を上から見下ろしたところ▲

前川國男設計 東京都立美術館

地下のギャラリースペースへ降りるエスカレーターの天井にも前川カラーの赤が▲

前川國男設計 東京都立美術館

カウンターの形にも注目!

実は、エントランスのインフォメーションカウンターもおにぎり型なんです。

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はつり工法のアーチとかまぼこ天井

エントランスのアーチは職人が手作業で固まったコンクリートをノミで叩く「斫 ( はつ ) り加工」が施されています。

この手作業による加工がアーチに表情を与えています。

前川國男設計 東京都立美術館

天井の柔らかな色合いのカッパーのポイントと照明が、硬質なコンクリートと美しい調和を生んでいます。▲

前川國男設計 東京都立美術館

はつり加工は内部の柱にも施されている

前川國男設計 東京都立美術館

天井と床のタイルの呼応が素晴らしい空間

館内もゆるやかなアーチを描くかまぼこ(ヴォールド)天井▲

前川國男設計 東京都立美術館

フィン・ユール展の様子

温かみのあるピンク色はインド砂岩です。▲カッパーのペンダント照明と共に柔らかで落ち着いた空間を作っています。

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美術館の椅子

美術館内の椅子も見逃してはいけません。

前川國男設計 東京都立美術館

公募展示棟休憩スペースなど館内のいろいろな場所に置いてある前川國男デザインのカラフルな椅子▲

前川國男設計 東京都立美術館

 

都美館の椅子といえばこれら前川國男×天童木工の椅子です。▲いろんな場所にあるので探してみましょう。

写真の場所(地下ギャラリー)は展覧会によっては入場料が必要となります。

前川國男設計 東京都立美術館

アースカラーの椅子もある

企画展示棟にあった天童木工の椅子のカラーはシックです。▲この椅子何色あるのかな?

前川國男設計 東京都立美術館

高い方のおにぎりテーブルは前川國男、ローテーブルがフィン・ユールです。

1階佐藤慶太郎記念アートラウンジには、前川國男デザインのおにぎりテーブルとイブ・コフォード・ラーセンのデザインのイージーチェア「IL-10」のセット▲

螺旋階段だけでなくここでもおにぎり型が登場です。実は、受付カウンターもおにぎり型です。

前川國男設計 東京都立美術館

展覧会では一部の椅子しか座れませんでしたが、ここは全て使用可能です。

そして、同じく1階佐藤慶太郎記念アートラウンジにあるデンマークのデザイナーフィン・ユールのカクテルテーブルとイージーチェアです。

これらフィン・ユールの家具は、2012年のリニューアル・オープンの際に導入されました。

この導入がきっかけとなって都美館で「フィン・ユールとデンマークの椅子/Finn Juhl and Danish Chairs」展を開催されたのです。

前川國男設計 東京都立美術館

外構にある照明もデンマークデザイン

実は、東京都美術館には、ポール・ヘニングセンデザインのルイス・ポールセンPHシリーズの照明があります。残念ながらこの照明、夜間になっても点灯されませんでした。

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惹かれる後ろ姿

東京文化会館もそうですが、前川國男建築は後ろ姿も素敵です。

前川國男設計 東京都立美術館

この打ち込みタイル工法が際立つ空間は、美術館を一度出てから背後(動物園側)にまわった場所です。

上野の東京都美術館に行ったら、展覧会はもちろんですが椅子や建築の見学もおすすめです。

また、上野駅目の前の東京文化会館と前川國男の師コルビジェによる国立西洋美術館見学も忘れずに。

基本情報

東京都美術館

9:30~17:30 (特別展開催中の金曜~20:00)

第1、第3月曜日(祝日・振替休日の場合は翌日)

特別展・企画展は月休

台東区上野公園8−36 MAP

アクセス:JR上野駅公園口より徒歩7分、東京メトロ銀座線・日比谷線上野駅7番出口より徒歩10分、京成電鉄京成上野駅より徒歩10

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