上野の国立西洋美術館で《パリ ポンピドゥーセンター キュビスム展—美の革命 ピカソ、ブラックからドローネー、シャガールへ》展が開催されています。
キュビスムというのは20世紀初頭にパブロ・ピカソとジョルジュ・ブラックを創始者として勃興したムーブメント。それまでの西洋美術の常識を大きく塗り替え、その潮流は現代のアート表現まで綿々と続いている、まさに100年に一度の大変革でした。
そのキュビスム時代の重要作品を多数所蔵するパリのポンピドーセンターから100点以上の作品や資料が来日し、そのうち50点以上は日本初出品となる貴重な展覧会。
さらに日本でキュビスムをテーマにした本格的な展覧会はおよそ50年ぶりという点でも貴重です。
伝統的な西洋絵画の流れからみても興味深いですし、現代のアートのある意味で出発点と捉えることもできるので現代アート好きも外せない展覧会です。
会期は2023年10月3日(火)から2024年1月28(日)までたっぷり4ヶ月。秋のアートシーズンから冬休みまでいつでも訪問できるのが嬉しいです。と言ってるとあっという間に混雑する展覧会になってしまうので早めに訪問しておきましょう。
なお2024年3月から7月まで京都の京都市京セラ美術館へ巡回します。
スポンサーリンク展覧会構成
キュビスム展は全14章で構成されています。
展示室の入口に作品リストがあるので手に取ることを忘れずに!
▲展示室内の平面図です。
実際には階段の上り下りがあります。
鑑賞時間の目安
キュビスム展では絵画作品の他に雑誌・書籍などの資料、それと約13分間の映像作品があります。
主要作家約40人による絵画を中心に、彫刻、素描、版画、映像、資料などが約140点、日本初公開の作品が50点、キュビスムの創始者ピカソとブラックの作品も多く、じっくり鑑賞すると1時間30分以上。
できれば最低でも2時間はみておきたいところです。
ここから全14章のうち私が特に気になった作品を勝手にピックアップしてご紹介します。
1章:キュビスム以前―その源泉
キュビスム展ですが展覧会の最初はセザンヌ、ゴーガン、アンリ・ルソーといったプロト・キュビスムの作家たちから始まります。
特にセザンヌはキュビスムへの直接的な影響で知られています。
このセクションは撮影禁止の作品が多いのですが、キュビスムへ至る直前の西洋絵画という視点から興味深い作品が並んでいます。
2章:「プリミティヴィスム」
続いてプリミティヴィスムのセクション。
ここでパブロ・ピカソとジョルジュ・ブラックが登場します。特にジョルジュ・ブラックの「大きな裸婦」はキュビスム史上非常に重要な作品です。
▲マリー・ローランサンの「アポリネールとその友人たち(第2ヴァージョン)」。
パステル調の女性像で有名なマリー・ローランサンですが、若い頃は恋人のギョーム・アポリネールを主人公にキュビスムの影響下で作品を描いていたのです。
3章:キュビスムの誕生―セザンヌに導かれて
第3章もジョルジュ・ブラックとパブロ・ピカソの作品が続きます。
特にジョルジュ・ブラックがポール・セザンヌの跡を追うかのようにレスタック(エスタックとも)地方の風景を描いたことでキュビスムの誕生は決定的になります。
その重要作が展示されていて、ここが本展の最初のクライマックスかもしれません。
スポンサーリンク4章 ブラックとピカソ―ザイルで結ばれた二人(1909–1914)
第3章に続く第4章もすべてブラックとピカソの作品です。
お互いに影響を与え合いながら自覚的にキュビスム的作品を描いていた時代です。
ピカソの傑作「肘掛け椅子に座る女性」もこのセクションで見られます。
5章 フェルナン・レジェとフアン・グリス
続いてブラックとピカソの追随者であるフランスのフェルナン・レジェとスペインのフアン・グリスのセクション。
▲レジェの代表作「婚礼(The Wedding)」。キュビスムの代表的な作品でもありますね。
またミュージアムショップではフアン・グリスの作品を使ったヨックモックとのコラボ商品が売られています。
7章 同時主義とオルフィスム―ロベール・ドローネーとソニア・ドローネー
後に抽象画へ移行するロベール・ドローネーも出発点はキュビスム。
人気の大作「パリ市」はこのセクションです。
8章 デュシャン兄弟とピュトー・グループ
画家で版画家のジャック・ヴィヨンと彫刻家のレイモン・デュシャン=ヴィヨンのデュシャン兄弟。末弟はあのマルセル・デュシャンです。
そのマルセル・デュシャンの油彩画「チェスをする人たち」が展示されています。
9章 メゾン・キュビスト
レイモン・デュシャン=ヴィヨンをフィーチャーしたセクションで、彼がデザインした2階建ての建築模型の写真も展示されています。
▲メゾン・キュビスト(キュビストの家)。
立体を平面に落とし込んだキュビスムをさらに建築や装飾に再度展開しようという野心的な試みだったのです。
14章 キュビスム以後
ピカソは早い時期にキュビスムから脱していきますが、ムーブメント自体は20年代も続き、もしかしたら今も続いていると言えるのかもしれません。
最後の14章は戦争(第一次世界大戦)が終わりキュビスムを乗り越え次の運動へ進む作家たちの作品です。
▲キュビスムの主要画家フェルナン・レジェによる「タグボートの甲板」。
そしてこのセクションでは建築家ル・コルビュジエの作品も紹介されています。いま国立西洋美術館が世界文化遺産として登録されているのは「ル・コルビュジエの建築作品」としての登録なのですが、その国立西洋美術館で自身の絵画作品が展示されるるというのは建築家としても画家としても喜ばしい限りです。
キュビスムはこの後、抽象画、建築、映像など文化のあらゆる方面へ影響を与え発展を続けるのですが、その原点であるプロト・キュビスムからポスト・キュビスムまで主要作家の主要作品が勢ぞろいと言っても過言でない濃い展覧会です。
これだけの濃密で俯瞰的な展示をこれだけ大規模に行えるのは国立西洋美術館ならではないでしょうか。
スポンサーリンク
ミュージアムグッズ
キュビスム展で濃密な時間を過ごした後は、ミュージアムショップでミュージアムグッズという流れ。これも展覧会の楽しみのひとつです。
▲もちろん図録は外せません。
▲これは南青山の有名な洋菓子店ヨックモックとのコラボ・プティシガール缶。
ヨックモックはピカソのテラコッタを収集・展示するヨックモックミュージアムを運営しているので、ピカソつながりでのコラボなのではないでしょうか。
▲トートバッグにノート類。
それと右の円筒形のものは展覧会オリジナルのマイボトルです。
▲Tシャツやキャップといったアパレル類。
キュビスム展で逆にその偉大さを再認識させられたポール・セザンヌ(PAUL CEZANNE)のTシャツが、究極にシンプルでいいかなぁ。
▲他にも色々なグッズがあるのでぜひショップへも足を運んでみてください。
スポンサーリンク
写真撮影とフォトスポットについて
この展覧会では不可マークの付いた作品以外は写真撮影が可能です。ただし動画での撮影は全てNGです。
撮影禁止作品については個々に撮影禁止マークが掲示されています。

「キュビスム展―美の革命」国立西洋美術館
▲会場入口に ”会場内の撮影について” という案内板が設置されているので、現地で最新の情報を確認の上で撮影ください。
なお本記事では特別に許可を得て撮影した写真を使用しています。
▲展示室入口にはフォトスポットが用意されています。
人気イラストレーターWALNUT(ウォルナット)が芸術の都パリを感じるオシャレな男女と出品作品をイメージしたモチーフをキュビスム風に描き下ろしたオリジナルイラストです。
キュビスムが勃興した20世紀初頭のパリジャン・パリジェンヌになったつもりでポーズを決めてみましょう。
音声ガイドについて
「キュビスム」は現代のアート表現にまで影響を与え続けていますが、西洋の伝統的な絵画表現を大きく変えたムーブメントだけに難解に感じるかもしれません。
そんなキュビスムを実際の作品を通じて分かりやすく解説する音声ガイドも用意されています。
▲ナビゲーターはポケモンや鬼滅の刃で知られる声優の三木眞一郎さん、推しの子でブレイクした声優の伊駒ゆりえ(いごま・ゆりえ)さん。
そしてボーナストラックとして評論家の山田五郎さんがいつもの軽妙なトークでキュビスムについて解説されています。
貸出料金は650円です。
スポンサーリンク
100年ちょっと前にフランスで始まったキュビスム。この展覧会を鑑賞すると、そのムーブメントがそれまでの絵画、美術だけでなく広いジャンルの文化に影響を与え、19世紀的な近代文化を永遠に変えてしまったムーブメントだったことが良く分かります。
でもその出発点には印象派からポスト印象派へ前進したセザンヌがいて、そしてキュビスムの先には私たちが親しんでいる現代のアーティストたちがいて、アートは脈々と繋がっているのだということを実感できる展覧会。
これは必見!
ル・コルビュジエ建築で見る「キュビスム展―美の革命」、おすすめです!
基本情報
パリ ポンピドゥーセンター キュビスム展―美の革命
9:30 ~ 17:30 金・土は夜間開館 ~20:00 月曜休館、10/10(火)、12/28(木)〜1/1(月祝)、1/9(火) チケット:一般2,200円、大学生1,400円、高校生1,000円、中学生以下無料 日時予約制ではありませんが事前にオンラインチケットを購入していくと入館がスムーズ! 東京都台東区上野公園7−7 MAP アクセス:JR上野駅下車(公園口出口)徒歩1分、京成電鉄京成上野駅下車 徒歩7分、東京メトロ銀座線、日比谷線上野駅下車 徒歩8分 |
スポンサーリンク