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アート・プロジェクト「コモンズ農園」を紹介する廣瀬智央《みかんの旅》を冬の長野県立美術館で


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長野県立美術館

長野県立美術館で現代美術家、廣瀬智央(ひろせ・さとし)の個展《みかんの旅》が開催されているので久しぶりに長野県立美術館を訪問してみました。

長野県立美術館は少し前に宮崎浩の設計でランドスケープにこだわったモダンな美術館にリニューアルされ、また中谷芙二子の霧の彫刻が常設展示されたこともあり、私たちもオープン早々の時期に訪問しています。

今回は廣瀬智央のプロジェクトの展示、そして冬の長野県立美術館(と霧の彫刻)がどうなっているのか、新幹線とローカル線を乗り継いでの訪問です。

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廣瀬智央 みかんの旅

廣瀬智央は1963年生まれの現代美術家。

イタリアの国費留学生としてイタリアに渡り、今もイタリアのミラノを拠点に日本と行き来しながら制作活動をしています。

▲会場となる長野県立美術館の「アートラボ」は視覚以外の感覚も使った鑑賞が可能な実験室(ラボ)を目指しているスペース。

レモンを使ったインスタレーションなど、嗅覚や触覚によるインスタレーションを制作してきた廣瀬智央にとってもぴったりなコンセプトを持つ展覧会場です

▲今回は「みかん」がテーマです。

展示室いっぱいにみかんの匂いが漂っています。

会期が進むに連れ匂いの強さや香りが変化していくところも作品の一部です。

近くなら何度もリピートしながら鑑賞したいものです。

▲みかんがテーマなのは、リンゴが特産の長野県に対抗しているわけではなくて、廣瀬智央が和歌山県の紀南地方で現在取り組んでいる長期的なアート・プロジェクト「コモンズ農園」の紹介も兼ねているからです。

「コモンズ農園」は農園をいちから開拓し、みかんなどの柑橘類を育て、収穫したみかんを素材とした作品を将来的に制作するという壮大なプロジェクトです。

展示室の中央に置かれた《みかんの家》。箱の中を覗くとみかんの香りが広がります。

後ろに見える大きな紙は《みかんの紙》。廃棄みかんを漉いて作ったものです。

▲レモンの時もそうでしたが、みかんでも《みかんバー》が用意され来場者にみかんジュースを提供するパフォーマンスも。

ただパフォーマンスが行われるのは作家本人が来場しているときだけ。通常はお触り禁止です。

白いメロンのようにも見えるのは《みかん》。イタリア産白大理石を素材にした彫刻作品です。

▲展示室の脇に置かれた瓶入りジュースは《みかんジュース》。

モランディの絵画のようにも見える美しい光景です。

▲展示室内には床にみかんが置かれていたり、善光寺を望む大きな窓ガラスにマーカーでコモンズ農園のスケッチが描かれていたりしています。

こうした空間そのものも作品です。

▲展示室前に展示されているのも作品です。

作品の設置中に出た養生テープやマスキングテープなどを使って様々な球体を作っています。

展示作品数は全部で11点。約10分ほどの映像作品を含みます。

また、写真撮影も可能です。

冬の長野ということもありお客さんも少なく、人と時間を気にすることなく鑑賞できると思います。

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冬の長野県立美術館

今回の訪問の目的のもう一つは冬の長野県立美術館がどうなっているのかという、単なる好奇心です。

もちろん美術館自体が開館しているのは当然なのですが、これまでは初夏や夏の時期に訪問していたので、あのフォトジェニックな美術館が冬はどんな姿を見せてくれるのか見たかったのです。

▲夏の時期は中谷芙二子の《霧の彫刻 #47610 -Dynamic Earth Series Ⅰ-》のインスタレーションが行われる「水辺テラス」。

ですが冬の間はインスタレーションも休止になり、水辺テラスの水も抜かれています

▲そして何やら工事も行われていました。

たぶんインスタレーションが休止されている期間にメンテナンス工事が行われるのでしょう。

中谷芙二子のインスタレーションが見られないのは残念ですが、きちんとメンテナンスが行われている(=予算も確保されている)ことが分かってむしろ安心しました。

▲長野県立美術館には日本画家の東山魁夷だけを展示する「東山魁夷館」が併設されているのですが、1990年にオープンしたここは谷口吉生による設計。

そして水盤と直線的な構成の美術館とで素晴らしい光景が見られるはずなのですが、残念ながら冬季は水盤も水が抜かれ、中庭も立ち入り禁止になっていました。

谷口吉生も一番良いところが見られず、中谷芙二子のインスタレーションも休止。

長野市は長野県でも北の端に近く冬の間は暗い曇天の日や雪の日が続きます。そうすると美術館のもうひとつの目玉「風のテラス」もただ寒いだけの場所になってしまいます。

もし長野県立美術館の建築やランドスケープ、霧の彫刻などをフルに楽しむなら、やはり霧の彫刻が実施されている時期の訪問をおすすめします。

アクセス

長野県立美術館には一般向けの専用駐車場はありません。美術館直通のバスもありませんが近くまで行く路線は30分に1本程度ですがあるようです。

一番アクセスが良いのは長野駅から善光寺へ向かうバス(これは比較的本数が多いです)に乗って善光寺まで行き、そこから歩いて10分です。参拝してから美術館に向かえるので便利です。

▲今回利用したのが長野電鉄。長野駅から善光寺下駅まで地下鉄(?)で移動できます。新幹線と接続しているので待ち時間も少ないです。

3つ目の善光寺下駅で下車して10分ちょっと歩けば長野県立美術館です。

写真は長野駅のホームですが左が特急(善光寺下駅には停まりません)、右が各駅停車。

見れば分かりますが左は成田エクスプレスのお下がり、右は東京メトロ日比谷線のお下がりです(ただし3両編成)。

善光寺下駅のような相対式ホームから向かいのホームに停まる電車を見ると、まるで日比谷線のどこかの駅かと錯覚しそうです。

本来の長野県立美術館を楽しむなら4月から10月くらいがお勧めです。

長野県立美術館や中谷芙二子のインスタレーション、谷口吉生の建築についてはこれらの記事が詳しいです。

基本情報

廣瀬智央 みかんの旅


2023年11月3日(金) 〜 2024年2月12日(月)

9:00 – 17:00、水曜日休館、12/27–1/3 休館

入場無料

長野県立美術館

長野県長野市箱清水1-4-4 MAP

アクセス:長野電鉄 善光寺下駅から徒歩15分

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